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はざま神経内科・内科医院

  HAZAMA CLINIC of NEUROLOGY & INTERNAL MEDICINE

内科 神経内科 / プライマリケア 産業医

はじめに

生物は長い時間をかけて突然変異をくり返しながら進化してきました。
しかし、中にはこの突然変異によって思わぬ病気を引き起こすこともあります
ヒトの身体はアミノ酸の集合からできていると言っても過言ではありません。自然界には300種類ほどのアミノ酸が存在すると言われています。そのうち人類は20種類のアミノ酸から出来ており、このアミノ酸を必須アミノ酸と呼んでおります。いろいろな酵素の働きによってアミノ酸からタンパク質へと組み立てられ人間の身体が完成していきます。このアミノ酸をたどっていくと終着駅はDNAと言う訳です。
アミノ酸からタンパク質を組み立てるには必ず酵素が必要になります。この酵素も同様にアミノ酸から成り立っております。タンパク質を建築物に例えるならさしずめ酵素は精巧緻密な大工さんと言えます。酵素を作るDNAに狂いが生じると酵素に変異体が出来てしまい、大工さんとしての働きに狂いが出てしまいます。
数年前、わずかな鉄骨を手抜きしたために巨大な建築物が取り壊されると言う事件がありました。人体においてもしかり。突然変異を起こした酵素は正常なタンパク質の代わりに手抜きタンパク質をつくってしまい、その結果、このたった1個のタンパク質のため人体に大きな障害が生じる事があります。

ポイント・ミューテーション(Point mutation)

それぞれのタンパク質は決まったアミノ酸配列をしておりますが、かならずしもすべてが同じという訳ではありません(variant 変異体)。人類においても希ではありますが、この変異体は存在します。ある意味では生物の進化の過程で変異体が生じているのかも知れません。この変異体はDNAレベルで1カ所の塩基配列が変わったために生じています。この1つが変化することによってタンパク質の変異体が生じ、結果として人類は進化もするし思わぬ病気を生じさせることもあります。このDNAに生じる1箇所の塩基配列変化をポイントミューテーションと呼んでいます。

鎌形赤血球症

正常赤血球と鎌形赤血球


この疾患は貧血を引き起こします。遺伝性で赤血球の形が円形ではなく、鎌に似て三日月状の形を成す事よりこの呼び名がついています。鎌形赤血球症は地中海を取り巻く沿岸に多く、マラリアと共に存在した疾患とも言われています。かつてマラリアは人類を滅ぼす疾患としておそれられた疾患です。酸素に富む正常な赤血球の中で繁殖していきますが、鎌形赤血球の中では生存することが出来ません。いわば鎌形赤血球症はマラリアに抵抗性を持ったがためにマラリアの感染から免れて生き残ったとも言われています。
赤血球はα、β鎖の2本のヘモグロビンを基本に成り立っています。鎌形赤血球症はβ鎖を支配するDNAの中で6番目のグルタミンがバリンに変わったために起こっています(point mutation)。
20世紀末にはヒトゲノム計画が発足し、今世紀初頭には全人類の遺伝子が解析されました。DNAの生みの親であるワトソン博士の個人遺伝子情報が発表されたのもつい最近のできごとです。これらの発見により疾患はおろか、生命の仕組みまで解明されようとしております。
その意味で、この鎌形赤血球症の遺伝子解明は1つのエポックを築いたできごとだったといえるでしょう。